これからを生きる小説家に必要なたった2つの技術
これからを生きる作家に必要な力とは?
どうも水谷です。小説家をやっています。
ここ数年で随分とWEB小説の盛り上がりを感じるようになりました。
実際に有名になっている方から「法則性」を見出せないものかと考えた結果「二つのシンプルな法則」が見つかった(気がする)のでこのブログでまとめてみます。
それは「多作力」と「組合せ力」
今日はこの二つについて語りたいと思います。
やや長くなるのですが最後まで是非ともお付き合いください。
「多作力」について
「多作力」とは「とにかくたくさんの作品を作ること」
この考え方自体は、WEB小説が興隆するずっと前から、プロの小説家、漫画家さんによって主張されています。
詳しくは「小説家にガチでオススメできる本が、だいたいどれも同じことを言っていた件」を見て欲しいのですが、
その中でも「特に心揺さぶられるメッセージ」をいくつかピックアップしてみます。
新人はとにかく良い作品を次々発表するしかない。発表した作品が、次の仕事の最大の線になる。それ以外に宣伝のしようがない、と考えても良い。
したがって、最初のうちは、依頼側が期待した以上のものを出荷する。価格に見合わない高品質な仕事をして、割が合わないと感じても、それは宣伝費だと理解すれば良い。
パブロピカソは生涯に5万点以上の作品を描いた。10万点を超えるという説もある。
ヴァージン・グループは400社以上の会社を立ち上げ、グーグルは何百もの製品を作った。アルバートアインシュタインは何百本もの論文を書き、トーマス・エジソンは1093個の特許を撮って何マンもの実験を行った。
今では有名な話だが、アップルが新しいアイデアを生み出すときは、90%が失敗に終わる。
成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方より
成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方
- 作者: フランス・ヨハンソン
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2014/01/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
特にその傾向はWEB小説では強くなっています。なぜならWEBでは読者の反応が直接自分に返ってくるから。
つまらない回を書けば、次回のアクセス数は減りますし、逆に面白ければ如実に評価として現れます。
これまでは、編集者、出版社が「面白いかどうかの一次審査」を行っていました。そのため、直接フィードバックをもらえるほどの関係性を作れていない新人は、評価の内訳がブラックボックスであり、同時にその評価自体が「市場の評価」とズレていることも多々ありました。
しかしWEB小説では「読者に支持されている作品を出版する」という方向へと進んでいるため「何が良くて何が悪かったのか」という評価が明確で、しかも直接の売り上げと相関関係を持ちます。
つまり「いろいろな作品をちょっと出してみて、反応が良ければさらに続ける」という手段が取れるようになったのです。
今までは、(何の企画を出すのかを)編集者と作家が勘で決めていた。
しかし、そんなものは、やってみなければわからない。
小説の企画(プロット)がA案B案C案と三つあった場合、どれがいいか?
だが、今なら冒頭部分を三つとも書いてネットにアップすればいい。
出してしまえば、それぞれアクセス数をはじめとする、読者からの反応がわかる。
ウケなかったら、設定を変えて再リリースすることもできる
ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)より
ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)
- 作者: 飯田一史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/02/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (15件) を見る
Twitterの投票機能を使って投げかけてみるのも面白い試みです。
「ウェブ小説の衝撃」という本で、「小説のプロットでA案B案C案のどれが良いかわからないなら、全部アップして読者の反応を見てみると良い。」とあったけど、作家にとってのTwitterの投票機能は、これに近いのかも!https://t.co/T4MNEkrZrK
— みずけん@comico公式作家 (@mizutanikeng) 2016年10月9日
「組合せ力」について
「多作力」では、WEB小説のメリットばかりを書いてみましたが、もちろんデメリットも存在します。
特に大きく危惧されているのが、
「作家」ではなく「作品」を基準として物事が進んでいく
ということ。
これは次の2点で「作家として生きていくこと」を難しくしています。
①メディアと作家の関係が「作品 」単位で行われる
「この作品が人気あるからうちで面倒見るけど、その後は関係ないからね。」
乱暴ですが、このような関係性が今後、メディアと作家のスタンダードとなるようです。
メディアに縛られることがなく色々な場所で作品を出版できるメリットがある一方で、一度出版をしても次に繋がるかはその人の実力次第。
例え、一度声がかかったからといってもすぐさま作家として生活していけるわけではないのです。
②ファンが「作家」ではなく「作品」につく
これもWEB小説では頻繁に起きている現象。
「作品」を好きになっても「作家」を好きになることが少ないそうです。
これは①とも深い関係がありますが、そもそも一人の作家が世に出す作品量が少ないために、「この人の別の作品を買ってみよう」とファンを囲い込めていないのでしょう。
上記の①、②を踏まえて必要なのが「組合せ力」です。
これは「小説+α」の力。つまりは「ブランディング力」と言い換えられます。
WEB小説というのは前述した通り、最終的な購入者である消費者の評価で出版するか否かを決められます。
となると、従来の「とりあえずあの有名作家さんにお願いしよう」という傾向は薄くなる。
その結果、「作品」単位で次々に新しい流行が生まれるようになりました。
加えて、参入障壁が低くなっているため、競争は激化します。
そこで必要なのが、小説以外の分野に出て行く力。
小説以外の分野とタイアップ(組んでいく)する力です。
例えば僕は「ホラー」「ショートショート」が好きでその界隈の記事を読むことが多いのですが、IT分野とのコラボであったり、リアルなイベントとのコラボがここ最近はかなり一般化されてきています。
ホラーであれば、株式会社「闇」さんが仕掛けるイベントやサイトデザインはとても魅力的です。同時にさらに多くのホラー作家さん協力することで、「物語としての怖さ」はさらに追求できるのではないのかなと思いました。
また、ショートショートで注目しているのは田丸さん。この方はどんどん新しい仕掛けをしています。
ショートショート講座を開くのはもちろん、レシートにショートショートを書いたりと「小物」「家具」としての小説の道を探ろうしています。
「小説家がいない分野」である程度の知名度を築くことが出来れば、「作家」としてのブランドが高まっていくわけです。ブランドが高まり、読者から唯一無二の存在となれば、長期的なメディア、出版社との関係も築きやすい。
このようにWEB小説以外の分野での活動を少し拡大してみると、自分だけの領域を作れるかも知れません。
まとめ
これまでをまとめると次の一言に集約できるのかなと思います。
「新しい分野で次々に作品を発表すること。」
シンプルですがこれからのWEB小説業界を生き抜くために非常に重要だと思うので是非とも意識してみください。
僕も新しい仕掛けをどんどんしていけたらと思っています。